「あの・・・」

 私の一言で、皆がピタっと手を止めた。

 お味噌汁を飲む手も。

 おかずの取り合いをしてる手も。

 まぁ、聞いてくれるなら嬉しいけど・・・。


「・・・次の土日。どっちか空いてる人・・・いませんか?」

「次の土日?」

「小夏。何日? 次の土日って」

「18日、19日」

「あ・・・オレ両方埋まってる。ごめんな雪」

 申し訳なさそうに、片手を立てて謝るのはお兄ちゃん。

 だよね・・・忙しいよね、美容師さんって。

 期待が1つ壊された。

「オレもムリ」

 短くキッパリ言い切ったのは恭ちゃん。

 期待がもう1つ破壊。


「・・・オレは、バンドの練習があるから・・・ゴメンな」

 隣で首をかしげて、しゅんとした顔で謝るのは巧くん。

 ・・・あと2人。


「オレは日曜なら空いてるよ」

「え?」

 翔ちゃんがおかずを勝ち取ったようで、嬉しそうな顔でOKを言う。

 やった。

 あ・・・でも、空いてるだけでまだ行ってくれるとは言ってないよね・・・。

「オレも日曜なら空いてるけど」

 小夏くんは、おかずを取られて少し不機嫌な様子で言う。

 ・・・どっちと行けばいいんだろう。


 ポケットの中で、2枚だけの映画の券をクシャっと握った。


「ていうか、何でそんなこと聞くの?」

「・・・見たい映画あって。その券を友達からもらって。期限が次の日曜までで。で・・・その、カップル割引がきくから・・・です」

「・・・・・・何それ」

 小夏くんは、驚いた様子で私の顔を見る。

 それになんだかたえれなくて、私は下を向いた。