八木さん家の5人兄弟。


「・・・何、泣きそうなわけ?」

「ちが・・・・・・」

「・・・泣くなよ。うぜぇから」

「っ・・・・・・」

 涙腺限界。

 私は涙をボロボロと零してしまった。

 
 涙が、恭ちゃんの部屋のじゅうたんに落ちる。

 あ・・・またうざいって言われる。


 私は必死に止めようとするが、一度流れたものを止めるなんて出来なくて。


「・・・ごめんなさい。ごめんなさい・・・」

「・・・・・・なぁ、泣かれても・・・どうしていいか分からんねぇんだよ。・・・どうしたらいいわけ?」

 少し不安気で。

 聞いたことないような、少年っぽい調子で話す。

 そんな恭ちゃんを、いつもと違うと思って。


 甘えたくなって。


「・・・慰めてください」

「・・・もっと具体的に」

「・・・・・・・・・ギュって、してください」

「・・・めんどくせぇ」

 
 恭ちゃんはそんな毒を吐きつつも、ぎこちない仕草でギュっとしてくれた。

 お兄さんだからこその包容力かな。

 ほっとする・・・。

 安心する。


 恭ちゃんの腕の中で溺れそうになる。


 安心がいっぱいで、嬉しさもなんかあって、泣いてたのになぜか笑いたくなった。


「・・・恭ちゃん優しー・・・」

「うぜぇ」

「・・・うざくても、いいです。また恭ちゃんにうざいって言われて・・・泣いたら。恭ちゃんが慰めてくれるから、いいです」

「・・・ばか。変な期待すんなうぜぇよ」


 もう、うざいって言われるのに慣れてきた。

 何で涙が出たのか理由は分からない。


 ちょっと涙腺が油断してて、うざいって言葉に敏感だっただけかもしれない。


 でも泣いたら・・・また慰めてもらえる。

 なら、泣いてもいいかも。