「えっと・・・雪ちゃん、だっけ?」

「は、はい・・・」

「あんず・・・ゆき?」

「そ、そうです」

「両方、名前みたい」

「よく言われます・・・」

「でもま、今日から八木ね。八木雪」

「は、はいっ・・・」

「オレは、長男の悠斗」

「ちょ、長男?」

 差し出された大きな手を、ギュっと握って握手する。

 が、長男という言葉に不安を感じた。


 長男ということは・・・他にも兄弟がいるってことだよね?

 
「えと・・・他には、兄弟、何人いるんですか?」

「えと・・・オレ抜いて・・・4人」

「よっ!?」

「オレ、5人兄弟だから」

「え・・・あ・・・」

「いきなり5人のお兄ちゃんが出来るって、不安だと思うけど・・・。ま、兄妹だから。男だけど一応家族なんだから襲ったりはしないよ?」

「は・・・い」

「あと、親父は今海外の方まで行ってるから帰ってこない。雪ちゃんは1回しか親父と会ってないよね?」

「あ、はい」

「ま、親ナシの、男ばっかの家だけど・・・危険ではないと思うよ」

「はい・・・」


 私は力なく返事をした。


 私のお父さんは、少し前に病気で死んじゃって・・・それより前にお母さんは死んじゃって。

 兄弟のいない私は1人ぼっちになった。

 
 そんな私を引き取ってくれたのは、お父さんの大親友のおじさんで。

 すごく、優しそうな人で。

 私は今日からそのおじさんの子になった。


 そして今・・・、おじさんの息子さんの人に挨拶中。


 長男の悠斗さんは・・・うん、優しそう。

 かけた黒縁メガネからのぞく瞳は、にっこりと笑っている。


 

 あと、4人いるっていうのが・・・不安だけど。