ギラは、翼を広げることなく、地上に着地した。

足に、風を纏い、ふわりにサラの隣に降り立った。

「何があった?」

ギラは、サラの顔を見た。

サラは、じっと1人の女を見つめている。

「ヒィ…」

サラのかまいたちによって、半径十メートル内にいた人や、木は切り裂かれていた。

そんな中で…その女だけは、無傷だ。

「ば、ば…化け物…」

腰を抜かしながらも、後方に下がる女は、サラを指差し、震えていた。

「ば、ば、化け物をををを!」

絶叫した瞬間、女の全身の皮膚がめくれ……

新しい皮膚が姿を表す。蟹のように、ざらついた肌。

「フン!」

サラは一瞬にして、間合いを詰めると、変化した女の体を、手刀で貫いた。

「ば、化け物…」

女は、絶命した。

サラは手刀を抜くと、自分の手についた女の血を、舐めた。

「こいつは……」

ギラは、死んだ女のそばに立った。

「人間だ……いや、人間から、変わる前か…」

サラは呟いた。

「変わる前?」

ギラも指に血をつけると、舐めた。

「!」

はっとするギラに、サラは頷いた。

「擬態前……まだ安定する前だ」

昆虫が、幼虫から成虫になる前の蛹。

幼虫と成虫は、体の作りがまったく違う。

蛹の途中…開けてみるとドロドロした液体になっている。

最初から、作り直すのだ。

「これは…」

ギラは、死体の女を見下ろした。

サラに貫かれた部分から…血と混ざり…溶けだしている内臓が見えた。

「人の……いや、魔物の蛹だ」

サラは、一振りで、手についたものを払うと、

女の体をまじまじと見た。