とあるカフェ。

カウンターが六席。テーブル席が、二席という…こじんまりしたカフェというより、喫茶店。

午後の一時を、カウンターで楽しんでいると、 

突然、僕の隣に座った男がマスターに、コーヒーを頼んだ後、初めて見る僕に、こう話し掛けてきた。

「僕は、宇宙人なんだ」

マスターから、出されたコーヒーを、一気に飲み干すと、カウンター内にいるマスターに、微笑んだ。

「マスターのコーヒーは、宇宙でも通用するよ」

そう言うと、僕の方を見て、

「あなたも、そう思いませんか?」

突然の男の振りに、僕は愛想笑いを浮かべ、頷いた。

男は、満足気に頷くと、
カップを置いた。

「おかわりは、いかがですか?」

マスターの言葉に、男は手を前に出して、断った。

「いいよ。マスターの二杯目が、最高なのは…もうわかってるから。それより…」

男は、じっと隣に座る僕の顔を見て、

「あなたは…どこの星から、来られました?」

「え?」

男の予想だにしない言葉に、僕は思わず、男の方を向いた。

妙に大きな瞳に、黒縁眼鏡に、紺のスーツ。

男は、顔を近付け、

「わかるんですよ…自分が、地球人じゃないと気付いた時から、同じ…宇宙から来た人の匂いが…」

男はにやりと笑い、

「マスターのコーヒーと同じ…匂いでね」



僕は、席を立った。

横のカウンターに座る男を見下ろし、

凝視した。

「赤星…」

ピアスから、アルテミアの声が聞こえてきた。

僕は、静かに頷いた。


「どうですか?同じ地球外生物として…親睦を深めませんか?」

男は、音を立てて、カウンターから立ち上がり、

「これから、私の家に言って…私の地球における研究成果を、お見せしますよ」