突然、男は苦しみだした。


片膝をつくと、男は僕を見上げ、

「もう…僕は、人を殺せない。だから…せめて…もう1人くらいは!」









男は持っていたナイフで、自らの首をかき切った。


「これで……適正人数に、少しは近付いた…」

男は微笑みながら……死んでいった。




僕が何も言えずに、立ちすくんでいると、光が僕を包み、アルテミアに変わった。


アルテミアは、嬉しそうな死顔を見せる男を見下ろし、

すぐに背を向けた。


「例え…殺せと……心の中が命じても……それにあがなうことができるのが、人間だ!」

アルテミアは、歩きだした。

「食料問題も、いずれ解決できる!砂漠や、海を利用できたら……人間は愚かではない!そうだろ?赤星」


「ああ…そうだね」

アルテミアの言葉を聞いて、やっと僕は、頷けた。

「あたしは、人を殺さない!絶対に!」

アルテミアは、白き翼を広げ、飛び上がった。




もし、あなたに意味もなく、衝動的に、死にたくなったり、殺したくなっても、負けてはいけません。


人は悪でも、正義でもないのかもしれない。


だが、自らの欲望を、自分で抑えることのできる…数少ない生き物なのです。


例え、遺伝子に組み込まれていても。