冬の香り

アタシ達の住んでいる土地は、冬が訪れるのが早く、また、去るのが遅い。

この日は11月のとても寒い日で、アタシと紗枝は白い息を吐きながら町を歩いていた。



「あれ?香緒ちゃん!寒いと思ったら雪だよぉ。」


そんな彼女の言葉に促されて、顎を上げ空を見上げるとサラサラと白い粉雪が舞い降りて来ていた。


「本当だ、初雪かな。まったく、こんな日に引っ張り出されるなんて。」


「むぅ、ごめんって言ってるのに。」


冷たい態度を取ってしまうのは決して嫌いだからではない。

確かに彼女はウザったいが、住まわせてもらっているのだからその点は感謝しているし、嫌ってはいない。

ただ、所詮人間なんて一生一緒にいるわけではないし、変に情が沸いてしまっても困るだけだ、という冷めた思考のアタシは、どうしても冷たい態度を取ってしまっていた。


「うぅ~、寒いっ!やっぱり家に遊びに来てもらえば良かったかなぁ。」


両手で水を汲むような形を作り、口に当て、ハァーっと息を吐く紗枝の身体が小刻みに震えているのが良くわかる。


「馬鹿言わないの。人に紹介するのに家はないでしょ家は。ほら、もう少しだからシャキッと歩く!」


弱音を吐く紗枝を後押ししながら、アタシはサラサラと舞い落ちる雪をボーっと眺めていた。