冬の香り

「ちゃんと財布持った?」


「うんっ、ちゃんと持ってきたよ。そんないつもいつも忘れ物してるわけじゃないよぉ。」



目を細めてにこにこと笑いながらアタシの肩をペチンッと叩く。156cmという小柄な身長が、女の子らしさを際立てていた。

アタシは167cm、紗枝と二人で歩くと明らかに引き立て役。こういう時はいつも自分のスタイルの良さを恨む―自慢しているわけではないのだが―。

ハァ、とため息をつきながら玄関のドアをガチャリと開く。


「どうしたの?ため息なんてついてたら幸せが逃げちゃうよ?」


アタシの顔を下からまじまじと覗き込む。

大きな瞳にじっと見つめられ、アタシはその純粋な瞳に吸い込まれそうになり…ハッとした。


「うるさいわ!アタシはあんたと違ってプライドが高いの、その辺の芋みたいな男ならいくらでも寄ってくるんだけど、そんなものじゃ満足できないのよね。ほら、さっさと出る出る!」


紗枝の背中をポンポンッと二発叩き、外に出るように促す。

後に続きアタシも外に出て、財布から鍵を取り出し玄関の鍵を閉める。


―ガチャリ。


さっきのアタシの言葉に何やらブーブー文句を言っているらしい紗枝を適当に受け流しつつ、

アタシ達は待ち合わせ場所へ向かって歩き出す。