「彼氏?さすがのアタシでもデートの邪魔は出来ないでしょ…。」

前もって紹介してくれる事が決まっていたならともかく、当日突然なんて非常識にも程がある。

それに家族を"演じている"アタシにとって正直同居人の彼氏の事なんてどうでも良いのだが、

どうやら紗枝はそうでは無いらしい。


「えー、もう彼氏に言っちゃったんだよねえ。幼馴染紹介したいから連れて行くねって。」



まさに典型的B型といったところだろうか。

勝手に話を進めている上に、本人は気付いていないが他人を振り回すのが得意。

もう何度この気まぐれっぷりに振り回された事か、その度に疲労、疲労、疲労。

しかし所詮はお世話になっている側。

"家族"を演じなければ居心地が悪くなってしまう、それだけは避けたいのでアタシは従うしかなかった。


「別にいいけどさ、普通そういう大事なことは前もって決めておくもんじゃない?当日突然とか非常識すぎるわ。そもそも紗枝は」


「あー、ハイハイ!わたしが悪かった!謝る!だから香緒ちゃんも早く準備して?ねっ?」


まだまだ喋っている途中で言葉を遮られ、準備を促され、またか、と声に出す代わりにハァッとため息をついた。

彼女はいつも自由奔放で、アタシはそんな彼女をよく説教しようとするのだが、紗枝の持ち前の明るさと笑顔で軽くかわされる。

そんなところも紗枝の良さなんだろうが、アタシにはウザったいだけだった。