冬の香り

アタシが邪魔していることに気付いているのかいないのか、紗枝は相変わらずアタシにくっついていた。

何かを見透かしているようで、でも、何にも気付いていないような、大きな瞳。

まただ。

またアタシはこの大きな目に吸い込まれそうになる。

この目をまっすぐ見つめることが出来ない。

汚れを知らないような、真っ直ぐで綺麗な目。


怖い。


「あんまりベタベタくっつかないで。」


思わず口を滑らせてしまい、ハッとして紗枝を見ると、顎を落とし唇を噛み締め、視線は少し斜め下に向いていた。

が、すぐに顔を上げ


「えへへ、ごめんね!」


と満面の笑み…いや、満面の作り笑いを浮かべていた。

そう。アタシはこれが不思議でたまらなかった。

突き放しても突き放しても何故か犬のように付きまとってくる。

何度同じ事を繰り返してもそう。

どうしてこの子はアタシを嫌わない?

どうしてアタシから離れない?

本当は気付いているんでしょう?

ねぇ、気付いているんでしょう?