冬の香り

アタシの欲求はもう止まらなかった。

秀と付き合えば、アタシも紗枝みたいな恋愛が出来る。

そうに違いない。

根拠のない自信がそこにはあった。


「秀、もし良かったらアタシにも連絡先教えてくれないかな。」


先手必勝。まぁ先手も何も、秀には彼女がいるのだが、一度思ったら一直線、行動せずにはいられなかった。

秀は当然彼女の幼馴染、しかもただの幼馴染ではなく、もうほとんど姉妹同然の同居人に連絡先を教えないわけもなく、快く携帯番号とメールアドレスを交換してくれた。


「うわぁ、秀と香緒ちゃんが仲良くなってくれるとわたしも嬉しいな。」


いつものにこにこした笑顔。

単純すぎる脳の持ち主が、目の前にいた。


「じゃぁさじゃぁさ、秀と香緒ちゃんが仲良しさんになった記念にプリクラでも撮りにいこう?ね?」


紗枝が身を乗り出して提案してきた。

目が物凄くキラキラしているのがわかる。

よほど嬉しかったのだろうか。

アタシが密かに秀を狙っている事も知らずに。

なんというか、おめでたい。

アタシも秀も、じゃぁ付き合うか、と言わんばかりに承諾した。

やったぁ、と喜ぶ紗枝を横目に、アタシは秀を見つめて今後の事を考えていた。