秀と呼ばれたその男は、着くと同時にこっちに向かって会釈をした。アタシも軽く会釈をする。

少し緊張してきた。


「こちら、わたしの幼馴染の香緒ちゃん。こっちは、わたしの彼氏の秀。よろしくね。二人ともタメだよ。」


紗枝がお互いを紹介してくれた。


「香緒さん、よろしく。」


秀がそっと右手を差し出す。


「こちらこそよろしく。香緒でいいよ。」


「じゃぁ俺も、秀で。」


自分の右手も差し出し、握手した。

紗枝は、いつもの様ににこにこした笑顔で二人を見つめていた。


アタシと秀はゆっくりと手を離す。

こんなに寒い気温とは対象的に、秀の手はとても温かかった。

それが印象深く、冷え切ったアタシの心に強く残った。