自然と足が数歩さがる。 まずい状況になった。非常にまずい状況に。 「待てよ」 彼の透き通った声に知らないうちに動いていた足が完全にとまる。 ふわっと風に押されたカーテンが舞って彼の顔が見えなくなる。 面倒なことになった。非常に面倒なことに。 サーーと風が引いていく。それと同時に舞っていたカーテンももといた場所にもどる。 私は一縷の願いをかけた。カーテンの向こうにいる少年が彼でないこと。 しかし、私の願い虚しく。 カーテンの向こうには整い過ぎているその容姿で笑う…――橘 大地がいた。