静かな教室。
いるのは私と突っ伏している黒髪くん。
帰るか。
そう思い扉に足を向かせる。
しかし、ふと桜がヒラヒラと私の前を通った気がした。
その瞬間、目の前が真っ白になりぐらりと傾く。
「っ!」
私は足に力をこめなんとか体制を整える。
『おい、てめぇ。なに…して…・』
そういった少年は癖の強い髪をしていた。黒くとても柔らかそうな髪。
私は弾かれたように振り返った。
『おもしろいだろ。右と左で色がちがうんだ!』
『うわぁあ!すごいね!わたしも――と同じような目の色がよかったな!』
『じゃあ、おそろいにしよう!』
『うん!やくそく!』
小さな子供の話し声が聞こえた。
しかし、その話し声は次の瞬間で聞こえなくなり、消えた。
私は今なにを聞いていた?
分からない。でも、忘れられる。その程度の事だ。
今はずっと突っ伏していた彼が誰だったのか。こっちの方が優先順位が高い。

