「さて、じゃあ改めて自己紹介」
そういうとリュウは黒板に私の偽名と雪治の名前を書いた。
書き終わるとチョークを投げるように置き、教卓に両手をつく。
「陽島先生はさっき言ったとおり、山田先生が退院するまでの代わりを勤めてもらう」
リュウからの視線がきたので一歩踏み出し一礼してから口を開く。
「陽島和泉です。入院中の山田先生に代わり、皆さんの副坦任と音楽の授業を受けもちます。よろしくお願いしますね」
ニッコリ笑いながら挨拶をして一歩さがる。
と同時に小さかった話し声がまた大きくなった。
「さっきと雰囲気ちがくね?」
「あ、あぁ。しいて言えば……天使?」
「あぁ!それだ!」
確かにさっきは苛々が募りすぎて冷たくしてしまったから、感じ変わり過ぎたか。
「あ、先程は少し気が立ってしまっていて……。普段は違うんですよ?だから、皆さんも優しくしてくださいね?」
先程の自分の失敗を思い出し、少し照れ笑いしながら言うと教室の至るところからごくりと喉を鳴らす音がした。
不思議に思い小首を傾げていると雪治とリュウが目を見開いて私を見ていた。
「これは、演技か?」
雪治がぽつりと言った言葉に極上の笑顔で答える。
そんな私の答えを見た瞬間、雪治は顔を真っ青にして顔をブンブンと縦にふった。
「「女って怖ぇ」」
ぽつりと言った雪治とリュウを無視して前を向いた。

