「で、何があったの?」
興奮する杏を苦笑いしながら話しをうながす。
「あのね!! 二人が来る前にお客さんがきたの」
まるで自慢話でもするかのように話し出す杏に再び苦笑いをしそうになるのをぐっとこらえ話しを聞く。
「一人は黒髪の美少女でもう一人は爽やか系のイケメンなんだけど、これまた二人が並ぶと絵に」
「杏ちゃん」と名前を呼ぶ虎の声にハッとした杏は再び話しを戻す。
「それでねあたし思わず興奮しちゃって黒髪美少女に――って、あの、その子の名前は天王寺桜って言うんだけど――」
その時、ガタンとパンの置いてある棚の方で大きな音がした。
「?」
不思議になりレジ台から身を乗りだし売り場を覗き込む。
「日向」
「あぁ、分かってる。すまない。話しを続けてくれ。」
杏は何となく違和感を感じつつも言われたとおり再び話しをはじめた。
「それでね、あたし桜ちゃんに、引っ越してきたの?とかどこに住んでるの?とか何しにきたの?とか質問しまくったんだ。て、木島さんどうかした?」
眉間にしわを寄せて険しい表情をしている日向に問い掛ける。

