洗剤やらなんやらの匂いが交じるこの場所。
最近の私の日課は、ここにきてひたすらグルグル回転するそれを見つづけることだ。
窓から外を見れば灰色になった空が雨漏り。
暇だ。
仕事が終わってくれたのは素直にうれしい。うん、うれしい。
でもさ、暇はいやだよ。
「あ」
そうだ。あいつに電話しよう。
電話帳から"変人"を選び通話ボタンを押す。
3回目のコールで出た変人はしごく鬱陶しそうな声で返してきた。
『なんだよ』
「暇だ」
『切る』
「切るな」
「お前じゃなくていい。菫をつれてきな」
『嫌にきまっんだろ?久しぶりの二人揃ってのフリーだぞ?家でマッタリ過ごすって決めてんの』
「マッタリだな?マッタリするんだな?なら私もそこに――」
『訂正。マッタリというなの恋人との触れ合いをする。来るな。絶対くるな』
うっと声を漏らしながら口を抑える。拒絶というものは時に心をえぐられるな。
「ちょっと泣きそうになった」
『知るかよ』
「………………うぅ゙」
『本当、お前はうたれ弱いな。まあ、今日はくるなよ。他はいいから。』
「じゃあな」と言われてしかたなく電話を切る。
暇。