『わ…若様!?』
『兄さん?』
なぜ火葬場に行ったはずの兄さんがここに?
顔をしかめながらこちらに歩いて来る兄さんを見て小首をかしげる。
『ひっ……ヒック…ぅ…うわぁぁぁぁん!!!!!』
兄さんと百合さんの登場で、隣にいた雪治がいきなり火がついたように泣きはじめた。
そのおかげか、近くにいた私や男の子はギョッとして雪治を見る。
『は?雪治?お前、なんで泣い…………っ!』
兄さんが目を見開いて口を紡ぐ。
そして私たちの姿を見た途端、顔を青くした百合さんが駆け足でよってきた。
泣きながら百合さんに抱き着く雪治を見て、ヒステリック女は更に顔を青くした。
『あ、おばさん。言うの忘れてたけど雪治は天王寺家の男連中からたいそう気に入らっ――!』
いきなり引っ張られ、忘れかけていた激痛に一瞬目をつむる。
目を開くといつもよりはるか上に目線があり、驚いて横を見てみると体が凍りつく。
そこには、今までに見たこともないような鬼の形相をした一月の顔があった。

