『……おばさんたちのせいだろ!?』
雪治の泣出しそうな声が聞こえた。
どうやら苛立ちを抑えるため下唇を噛んでいたのを雪治には泣くのを堪えてるように見えてしまったらしい。
『おれ、みたんだがらな!おばさん、が…さくらが…走ってきたときにっ……わざと…足だしたの!!』
『なっ!?』
わずかに震えた声でそう言う雪治の肩は震えていた。
雪治は大人が怖いのだ。
親に捨てられた子供。雪治は"それ"だった。
私が見つけなければ、今頃は餓死していたに違いような場所に雪治は捨てられていた。
つなわち、人が滅多に寄り付かない場所。しかも七歳の子供が一人で帰って来られるような場所でもなかった。
見えるのは確実な殺意。
その証拠に、初めて会った雪治の体には決して少なくはない"跡"があった。
怖くて仕方ない癖に私を庇うようにして立つ雪治にわずかに頬がゆるむ。
『謝れよ……さくらに、謝れ!!』
『し、失礼にも程があるわ!!』
『そうよ。礼儀を知らないの?』
雪治は冷たい言葉をかけられてもなお引き下がらない。
『っ!……礼儀を知らないのは、あんただ!!』
雪治がそう言った瞬間、パチンッ!!と言う効果音が響く。
いや、正式にはバチンかもしれない。どちらにせよ、子供が軽く倒れ込む位の威力はあった。
『大人をからかうのも大概にしなさい!!』
ヒステリックな声を出す女。倒れ込む雪治。
『……………』
私は目を見開き一瞬思考をシャットダウンする。

