それから母さんから聞いた話しはよく分からなかった。
ただ、これが母さんからの最後のお願いであることだけは理解できた。
そして私は母さんの最後を一人で見届けた――――――…………………………。
・・・・・・・・。
『聞きました奥様』
『まあ、なにかしら?』
『桜様。亡くなった空様を見ても表情一つ変えなかったんですって。オマケにお通夜とお葬式の方にも出席されていなかったし』
『まあ、なんて酷い。お母様が亡くなられたというのに………』
『でしょ?しかも、どこの誰かも知らない薄汚れた子供を連れてきて、一緒にすむなんていいだしたんですって』
『あ、奥様。あれ――』
雑音だ。
つまらない大人共のやり取りは全部、雑音。
『雪治!のろのろするな!!しゃきっとしろしゃきっと!』
『ちょ、待って!待ってよ、さくら!』
雪治が後を追って来るのを振り返って確認する。
うん、大分この場に慣れたな。
ついて来てるのを確認できたので前を見ようとした瞬間、何かにつまづいてしまいうまく受け身がとれないまま派手に転んだ。
『いっ…た……』
『さくら!』
後からきた雪治が青い顔をして私に駆け寄ってきた。
『血がすごいでてる…!』
『うるさい』
転ぶとき体が大きく左に傾いたせいで、左半身の服から出ていた腕や足、転んだ摩擦で服が破れ左肩に酷い擦り傷ができた。
『あら、こんな場所で呑気に追いかけっこしていたからバチがあたったんじゃないんですか?』
『ですねぇ』
クスクスと笑う声が聞こえる。
ちっ。
嘘付け。あんたらのどちらかが足を引っ掛けたくせに。
つまづいた感触で誰かに転ばされたのはすぐ分かったし、一瞬足が見えてんだよ。

