『かあさま』
布団で横になる母さんの枕元に座りこむ。
正直いって足がかなり辛かったし精神的にもピークだった。
“お前が最後を見届けろ”
冗談じゃない。
ふざけるのもたいがいにしてほしい。
心底そう思った。
だって、おかしいじゃないか。なんで、なんで先が短いと知っていながら傍にいようとしない。
父も兄さんも。大好きなくせに。
母さんの事、大好きなくせにっ。
無意識に溜まっていた涙がポロポロとこぼれ落ちる。
『桜?』
鈴のような声が聞こえはっとなる。バレないようにこぼれ落ちる涙を拭きいつものように話しかけた。
『かあさま、見て!かあさまの好きなスイレンのはなかいたんだよ!かあさまは布団からでれないからがんばって…かいたっ……んだよ?』
泣くな。一番泣きたいのは母さんなんだ。
泣くな。泣くな。泣くな!
『まぁ、綺麗ね。本当に綺麗。ありがとう桜。やっぱり桜は絵が上手ね』
すっかり細くなってしまったその手で頭を撫でられ、嬉しさと悲しさで胸が張り裂けそうだった。
『……あのね、桜』
すっかり黙り込んでしまった私をどう思ったのか、母さんは上体を起こし私を膝に座らせこう言った。
『強さのお話をしましょうか』

