そして同じように目を開け、孝正の前を歩き始める。


『仕事なら山ほどあります。いつも面倒がって手を付けない書類。片付けて貰います』



青年のその言葉に孝正はふっと目尻を下げて笑ったあと『面倒くせぇな』と言いながら青年の後に続く。



『ありがとな、海斗』



その言葉を聞いた瞬間、青年………海斗は一瞬目を見開いたがすぐに元の無表情に戻した。


『勘違いしないで下さい。俺はあんたのやり方を認めた訳じゃない。なんで、さっき言った言葉を謝罪する気もないし後悔してません』



『はっ、そのことじゃねぇよ。………桜の事、心配してくれてありがとな』


『っ!?………あ、あんたってやっぱり馬鹿だな』


『んだと、てめぇ。あ、ところで確かお前の弟。うちの娘と同い年だったな』


『確かに同い年ですけど。な、なんですか。いきなり』

『いや、なんでもねぇよ』




それっきり、会話はない。ただ、静まり返った廊下を歩く音だけが響いた。







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『かあさま』