『過去を振り返ってみよう。そうすればきっと真実が見えるから』


声が聞こえた。真っ暗な闇の中やけに明るく、からっぽな声。



―――過去を振り返って何が分かる。あるのは所々アナのあいた道だけ。


『じゃあ君は、そのアナとやらを埋めたいとは思わないわけ?』


その言葉に私は目を見開く。

そんな事考えたこともなかった。


『さぁ、願って。君が無くした記憶を欲するんだ』


―――やだ、怖い。


『怖くなんてないさ。大丈夫。君の記憶を……埋めにイコウ』







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『かあさま見て!!にぃさんと父が池におちた!!』


『本当? あらまぁ、本当に落ちてるわね。桜は大丈夫だったのね』

ふふっと笑い「よかったわ」なんて言いながら母さんは私の頭を撫でた。


・・・・・・・・・。



『親父。お袋。こいつが百合』

『な、永岡百合ですっ。よ、よろしく、お願いします!!』


百合さんが家に来たのは私が5才の時。父と母さんを前に、すごく緊張して言葉が噛み噛みになっていた。


『そう、堅くなるな。別に取って食いわしないよ』


『ええ、そうよ?これからは一緒に暮らしていくんですもの。ほら、桜。挨拶なさい?』


『……はい。てんのうじさくらです。5才です。かあさま大好きです。でも、父とにぃさんは嫌いです』


『『えぇ!?マジで!?』』

『よろしくおねがいします』



そういった後、すぐに私は母さんの後ろに隠れる。父と兄が何気にショック受けているのはスルーだ。


『ごめんなさいね?この子、人見知りが激しくて……。本当は、元気で明るい子なの。気を悪くしたかし……』
『かわいい』
『え?』



『めちゃくちゃかわいいです!!!』




こうして、百合さんの溺愛スイッチをオンにした。



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