「兄さん…………怒ってたのか?」
私の言葉に輪廻はあからさまに顔を歪める。
「まったく、あんたって子わ」
ため息混じりにそうつぶやく輪廻はまるで小さな子供をみるように優しげで、すこしムッとなる。
子供扱いをされるのは、余り好きじゃない。
「百合からの電話をどんな理由であれ途中で切ったんだろ?しかもいきなり。」
いきなり口調が変わった輪廻に少し驚く。と、共に胸が痛んだ。
これは罪悪感だ。
当然だが、あのあとはちゃんと謝った。百合さんだけに。
一月…………兄さんには理由がないので謝罪はしない。
うざいし。
「お前…うざいとかおもうなよ?不器用だが、あいつなりのやさしさだ」
その言葉に自分の中の何かが冷たくなっていくのを感じた。
輪廻の言葉に私は鼻で笑う。
「はっ、笑わせるな。不器用じゃなくて不気味の間違いだろ?それにあの人に優しさなんてモノはないよ」
そんな私の言葉に部屋の空気が変わる。寒々しいものへと。
私はソファーから立ち上がり、扉の方へ歩く。
「いつまでそう頑なでいるつもりだ。過去に囚われていても先には進めないぞ」
久しぶりに聞く輪廻の冷たい声。
私はその言葉を聞きながら扉を引く。

