知らないうちにため息がでる。

一体どんな手を使ったのやら。


「和泉ちゃん♪まだ、始めないの?」


誰が和泉ちゃんだ。殺すぞ。


心の中で睨みつけるが実際は笑顔を向け、言葉を返す。


「そうですね。始めましょうか。ところで、豊岡君?肩を小刻みに揺らして・・・・どうかされましたか?」


すると肩を揺らしていた雪治の動きがピタリと止まった。


「へ?」

「ふふ、どうかしました?」


口に手をあてて笑いながら問いかける。はたから見ればなんの変哲もないやり取りだ。


しかし雪治からしてみれば.........



(今すぐに笑うのを止めないと・・・・・分かってるな?)


と、言った感じに見えたはず。


「い、いえ。何でも・・・ないです」


雪治の表情から笑顔が消え、明らかなる焦りが見えはじめた。


ふふ、もっと焦ろ。


黒い感情が芽生え始めた時、教室の扉が開く音がした。