女王様は上機嫌【GL】

 

背筋が凍る。

綺麗な顔と柔らかな声音なのに、酷いギャップだ。


わたしが声を失ったまま立ち上がると、彼女は向きを変えて歩き出した。

動きに合わせて揺れる黒髪からは花のような香りがした。



「綺麗な子ー。人形みたい」

立ち去る後ろ姿を見ながら、友人が呟く。


確かに綺麗だ。

セーラー服に身を包んだ、ほっそりとした後ろ姿まで。

「うん、でも‥‥」

「でも?」

眉を寄せたわたしに、友人が首を傾げる。


「――なんでもない。そろそろ帰ろっか」

わたしは笑ってみせた。



ボールを握る手はじんじんと痛いのに。

なぜか彼女の悪行を言う気にならなかった。