真正面を向き、ボフッとシートにもたれかかった。
隣の運転席では雪がシートを下げてアイマスクをしている。
寝ているのだろうか。
雪は仕事をしている時以外は本を読んでいるか寝ているかのどちらかだ。
きっと寝ているのだろう。
そう思い、音楽でも聞こうかと琴はイヤホンを取り出す。
その瞬間、運転席の方からゴトッと音がした。
「起きてたんだ。」
のそりと顔を上げ、アイマスクを持ち上げていた雪。
いつものように、何を考えているのか分からない茶色い目。
呆然と宙を彷徨っていた。
「梔子って、何で梔子なんだろうな。」
「知らねーし。」
あー、また来た。
雪がどーでもいいことが気になってしょうがなくなる時。
琴はめんどくさそうな顔をしイヤホンをつける。
音楽はまだ流さないが。
「名前にはなんらかの理由があるよな。」
「閏は?」
「あいつは2月29日生まれだからだ。」
「へー閏年だったんだ。雪は?」
「生まれた日に雪が降ったからだ。」
「あ、冬生まれなんだ。」
意外なところで仕事仲間のプロフィールを知る。
誕生日を祝うようなアットホームな雰囲気はメモリーズにはないので知ったところでどうもしないが。
ただ、知ることで相手をよく知れた気になるのはなんでなのか、琴は少しひっかかった。
名前や誕生日なんて、その人の本質には何の関係もないことなのに。


