佳き日に





「きっとそれは轢き屋ですね。」

閏は一年も昔に一緒に仕事をした人物を思い出した。
いや、本当はあのとき閏一人で依頼をこなしたのだが。
一緒に仕事するはずが、いざ作戦決行となった時にCDプレーヤーが壊れたから直してくるとかなんとか言って仕事を放り出したのだ。
閏は別に一人でも十分以来はこなせたので何てことはなかったが、その後依頼者にこってり怒られたらしい。
自業自得だろう。
殺されなかっただけマシだ。

そんな、腕は確かなのに気分屋で責任感皆無な殺し屋、梔子。
閏も一緒に仕事はしたが、ほぼ電話でしか関わらなかったので実際の顔は知らない。

「琴が知らなくても無理はないだろうな。梔子はやる気があればなかなかだが、やり方が地味だから。」

雪が閏と琴の会話を聞いてそんなことを言ってきた。

「車で轢き殺すのか?」

「そう。ほぼ轢き逃げだ。」

「本当に地味じゃん。」

琴は興ざめしたのか、興味なさそうに窓の外を眺めだした。

閏はワンテンポ置いてから雪に話しかける。

「雪先輩。」

「何だ。」

「梔子、どうします?」

閏の問いにちらりと横目で窓の外を見てから、雪はめんどくさそうに答えた。

「殺るぞ。今ここで柳琥珀を殺されると俺たちが困る。」

幸いにも、梔子は今まさにそこの床屋の駐車場で柳琥珀を殺そうと企んでいるしな、とも付け加えた。

「琴、お前にも動いてもらうからな。」

「えー俺さっき働いたし。」

ダルそうに琴は言う。
最終的には雪の言う通りにしなければいけないのは分かっているはずだ。

形だけでも抵抗したいんだろうな、と閏は思った。
もちろん閏にもこの後雪から何らかの指示が出るはずだ。

そんな閏たちの物騒な計画とは対照的に、秋晴れの空は穏やかだった。