佳き日に


[5]



「轢き屋?」

「そうです。名前は梔子。」

大きなスーパーの駐車場の隅の一角に雪は車を停めた。

閏はバックミラーに琴の顔を見る。
一ヶ月ぶりだろうか。
かなり強いメモリーズを殺すときでなければ閏と琴が一緒に仕事をすることはない。
雪から呼び出しがかかるのなんてさらに稀だ。

だから、三人でこうして集まるのは半年ぶりでしょうか、と閏はぼんやり思う。

「梔子って名前だけなら聞いたことあるし。」

琴の声で閏は現実に引き戻された。
つい先ほど柳琥珀の携帯を壊す、という仕事を終えた三人。
何故そんなことをしたのかというと、椿から柳琥珀に連絡をとられたらたまったもんじゃないからだ。
不安の種は徹底的に潰すに限る。
そう言って無慈悲に柳琥珀の携帯を轢き壊していった雪の横顔はまだ記憶に新しい。
もちろん、琴が柳琥珀の手から携帯をたたき落とす場面もしっかり見ていた。

その琴はというと、車に乗り込み閏と雪に久しぶり、の一言も言わず不機嫌全開の声音で話してきた。

「同業者とか最悪だし。」

閏と琴はもう長い付き合いなので、琴の機嫌の取り方は熟知している。

「何があったんですか?」

話を聞いてやればいいのだ。
はあ、と呆れたような雪のため息は無視した。

閏が機嫌を損ねた琴の話を聞いてあげるなんていつものことだ。
大抵は愚痴なのだが。
ただ、今回は違った。
どうやら柳琥珀はメモリーズに命を狙われているようだ。
しかもなかなかめんどくさい相手に。