「しかも現在進行形で尾行中。」
「リアルタイムなんですか。」
「椿に自慢してきたらしいぞ。俺が赤い女をやっつける、だと。」
「自慢してくるあたりかわいいですね。」
なんてことない。
近所の犬が子ども産んだらしい、へぇそうなの。
そんな風な軽い会話を装っているが、桔梗と鉛丹の胸には不安が渦巻いていた。
梔子が赤い女を殺してくれるのだったらこれ以上いいことはないが、そう簡単に殺されるような相手じゃない。
赤い女が一筋縄じゃいかないことは桔梗と鉛丹が身を以て知っている。
「なんでまた梔子はそんなに赤い女を殺そうと躍起になっているんですかね。」
下手したら自殺行為ですよ。
赤い女に手を出すなんて。
桔梗は敢えて後に思ったことを口にしないでおいた。
「親が赤い女に殺されたんじゃねぇの。」
「なるほど。」
鉛丹は適当に言ったのだろうが、多分当たっているだろう。
じゃなきゃこんなに早く梔子が赤い女を殺そうとする理由がない。
メモリーズの子どもたちの大部分は親がいないし、親を赤い女に殺されたという例も珍しくない。
桔梗と鉛丹の両親は仕事でミスをして依頼人に殺されたらしい。
「それにしても今時、親の敵討ちだなんて珍しいですね。」
桔梗と鉛丹に言わせれば、そんなもの何の意味があるのか。
二人にとって親とは、いないのが当たり前だ。
殺されたのが赤ん坊の頃だったので、顔も覚えていない。
仮に、二人に親がいたとしても今と状況は大して変わらないだろう。
殺し屋として人を殺して生きてゆく。
欺瞞に満ちたこの世界では、子どもが親に裏切られるなんてよくあることだ。
逆もまた然り。
だから二人は自分の命を危険に晒してまで親の敵を討つことはあるのか、と疑問に思ってしまう。


