佳き日に





一般人だから、どうせ囮だろうから、と油断していた。

桔梗は歯がゆい気持ちを顔に出さないよう努める。

「おい、どーするよ、これから。」

鉛丹が忌々しげに呟く。
本当だったら今すぐにでも殺しに行きたいが、相手が赤い女なのでそうもいかない。
下手すればこっちがやられる。

「とりあえず、ファミレスで仕込んだ盗聴器を使いましょう。相手がどこで生活していて、仲間は何人なのか情報を集めます。」

「相手が赤い女じゃ、ファミレスで鞄に仕込んだ時点で気づかれてて、もうぶっ壊されてそーだな。」

桔梗は重いため息をつく。

仕事を始めたばかりの頃は、出し抜かれることなんて嫌という程あった。
寧ろそれは、この世界では裏切りと嘘が常識なんだ、と叩き込まれた教育期間のようなものだった。

今じゃ関東で一番勢力があると言われ、そこそこ名が通っているというのに。
柳琥珀の演技を見破れなかったのが悔しい。

「相手の嘘を見抜くのは得意な方だと思っていたのですが・・・。」

「まぁそこはさすが赤い女って感じだよな。」

俺は嘘を見抜くとか、全く出来ねぇけどな、と鉛丹は呟く。
桔梗が思考派というなら、鉛丹は行動派だ。
怪しい奴だ!!突っ込んで行け!!銃ぶっ放せ!!という感じに。
短絡的というか。