佳き日に




これは海外へ逃げるしかないか、と閏が絶望しかけた時。

雪がしれっとした顔でとんでもないことを言った。



「全部ハズレだ、椿。」

閏は目を見張って雪の顔を見る。
全部当たり、の間違いじゃないのか。


『・・・どういうこと?ふざけてるんだったら、切るよ。』

「ふざけてない。俺は冗談が苦手だからな。そのままの意味だ。お前にしてはめずらしいが、お前が予想していたことは全部ハズレだよ。」

『あんた達が警察側じゃないって言いたいの?』

訝るような椿の声。
訳が分からなくなっているのだろう。
当たり前だ。
雪と同じ立場であるはずの閏でさえも訳が分からないのだから。


「そうだ。俺たちは警察側じゃない。だけど、メモリーズ側でもない。」

『・・・・は?』

「あと、お前はあの福島に出た赤い女は囮だと予想したな。残念ながらそれもハズレだよ。本当の囮は、俺と、閏と、琴だ。」

『な、なにそれ。』

椿さんの焦った声が聞こえる。
表情一つ、声音一つ変えずにここまでの大嘘をつけるのはある意味才能だろう。

手を組まれる前にかき乱す、と言ったのはこのことだったのか、と閏はようやく合点がいった。
確かに、メモリーズにとって軸となる情報屋の椿を乱せば、あとは自然と他も乱れていくだろう。