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「おー椿か。久しぶりだな。」
なんてことないように電話し始めた雪を閏は信じられないものを見るような気持ちで見ていた。
この危機的状況の中で敵に電話!?
閏が唖然として雪を見つめていると、心配するな、という風に目配せしてきた。
「もうバレてるだろうから敢えては言わない。」
『へぇ。もっと焦ってるかと思ったのに。』
目配せで心配するな、と言われてもやはり不安なので閏も雪の方へ体を近づけた。
椿の挑発するような声が聞こえる。
『しかしあんた達もほんと曲者揃いよね。なんか隠してるなー、とは思ってたけどねぇ。』
「さすがの椿も俺らが裏切ってるとは思わなかったか。」
雪は敢えて挑発するようなことを言っている。
閏としては、情報の力がどれほど大きいか分かっているのであまり椿を怒らせない方がいいのでは、とハラハラした。
だが、電話している雪の顔を見るに、何か策がありそうだ。
『まぁ、確かに見破れなかったのは悔しいね。でも、あんた達でも今回は厳しいかもよ。』
「メモリーズの奴らが総出で俺らを狙ってるんだったら確かにキツいな。」
『まさにその通りだよ。昨日から騒がしくてしょうがない。』
椿はどこか突っぱねるようにそう言う。
この件にはあまり関わりたくないのだろうか。
『この前も福島で赤い女が出たって煩かったのに。あの赤い女もあんた達がメモリーズを誘い出す為にやったんでしょ。』
大当たり、と閏は苦笑いする。
さすがです、椿さん。
閏は頭を抱えたくなった。
あの柳琥珀という少女が囮だということもバレていたらしい。
それにメモリーズが総出なんて、勝てるはずがない。
どんなに強くても、数で来られては敵わない。


