佳き日に






「あ、僕桔梗って言います。」

ファミレスに入り、注文を終えたところで男の子がそう切り出した。
思わず琥珀はポカンとしてしまう。


「春じゃないの?」


男の子のジャージの名札には堂々と「白川春」と書かれている。


「あぁ、これは偽名です。」

「偽名!?ジャージには本名書きなよ!」

「偽名に憧れる年頃なんですよ。あなたにもあったでしょう?」

「いや、なかったよ。」


水を飲みながら呆れる琥珀に、桔梗という男の子はケラケラ笑う。


「で、今日僕があなたに聞いてほしいことはですね、」

「私の話聞きたいんじゃなかったの?」

「あぁ、それは嘘です。」

「嘘!?」

「嘘に憧れる年頃なんですよ。あなたにもあったでしょう?」

「もうそのくだりいいよ。」


ハーッと琥珀はため息をつき肩を落とす。

変に生意気なくせに、変に憎めない。

それから、琥珀は桔梗の顔を見つめる。
どこかで会った気がした。
なんとなく、だけれど。