「夫ですか?」
キョトンとした声で閏がそう聞いてくる。
「いや、違う。」
「じゃあ恋人ですか?」
そうなるのだろうか。
白川の片思いだが、まぁそれでいいか。
「まぁ、そうだね。」
ふざけた口調で言ったつもりだった。
だが、エナカのその一言で、車内の空気が一気に緩くなった。
え、なんだこの生暖かい空気は。
エナカは無表情に混乱する。
「良かった。」
ボソリと、小さく呟いた雪の言葉にいよいよエナカは訳がわからなくなる。
五十近い女が恋人なんて、いい年して何してんだと笑われるのがオチだと思っていた。
だが、雪と閏の反応は嘲るものではなく、全く逆のものだった。
困惑するエナカに、閏がそっと耳打ちしてくれた。


