佳き日に







「じゃあ言うけどさ、公転周期の計算なんてコンピューターにだって出来るんだよ。機械にも出来ることをやってどうするの。想像を膨らませて夢をみれるからこそ人間なんでしょ。」


女はそう言いふんっと鼻を鳴らした。

男は閉口している。

いい気味だ。
菘は新聞で顔を隠しほくそ笑む。

自分が全て正しいと思っている奴は一度痛い目にあうべきだ。

菘はシートに体重をかける。

先ほどの女の子の言葉が頭の中を回る。
夢をみるからこそ人間。

確かに、ただ生きるだけだったら動物にだって出来る。


ガタン、と振動。
新幹線が動き出したようだ。

コツン、と窓に頭を付け、目を閉じる菘。

椿が残した墓には何が入っているのだろう。
分からない。
知るのが怖い気もする。
でも、このまま、見ないまま過ごしたら、死ぬとき後悔する。

ガタン、とまた振動。

進むしかないな。

菘はそう思った。