佳き日に





[3]






菘は誰もいない席に腰掛け一息ついた。

目を閉じ頭を落ち着かせる。
新幹線のチケットはすぐ取れた。

あとは二時間も待てば東京に着く。

椿が残してくれた墓はどこだっけか、と菘は記憶を辿る。


「北極星が動かない理由なんて中学の理科で習っただろ。地球の地軸の延長線上にあるからだ。」


ドタドタという足音と共に、そんな声が聞こえてきた。

声からしても言ってることからしても理屈っぽい男みたいだ。
バフン、と音がする。
声の主は菘の後ろの座席に座ったらしい。


「だからそーじゃなくて、想像的な話をしたいの!」

その隣から女の声がした。

後ろには男と女の二人が座っているらしい。
声の感じから、付き合いの長さが感じられた。


「想像的ってどんなだよ。」

「たとえば、ある一羽の鳥が自分の子供たちが方角を間違えることがないように、空高く飛び上がり北極星になりました、とか。」

女のその語りに、男は鼻から息を吐き笑った。

嫌味ったらしい笑い方だな、と菘は思った。