「茜だろ、お前。」
雪の言葉にエナカは面白いくらい目を見開いた。
同時に閏は確信する。
あぁ、彼女が茜なのだ。
雨が好きだった少女。
「渡したいものがあるんだ。乗ってくれ。」
雪が相手の理解を待たずに言う。
エナカの方も警戒しながら返す。
「今渡してよ。」
「残念ながら俺らは今持ってないんだ。持っているのは琥珀だ。」
肩を竦めた雪。
エナカの口が二、三度開閉し、ようやく声を出した。
「琥珀って、柳琥珀のこと?」
「あぁ。これから迎えに行くんだ。」
閏が後部座席のドアを開ける。
エナカは数秒迷った後、車に乗り込んだ。
やはり琥珀が心配だったのだろう。
琥珀の話では、エナカと琥珀は仲が良いようだったし。
不安そうなエナカの表情を横目で見る。
閏も不安になってきた。
パトカーの音が遠くに聞こえた。
琥珀と琴が無事ならいいのだが。


