佳き日に





「ーーえっ?」


グイッと肩を押せば、琥珀は桔梗と共にいとも簡単にバランスを崩した。

その身体が空中で止まって見えた。
見開かれた目には驚愕が浮かんでいて。



「死体は二つあった方がいいし。」


鉛丹と、桔梗の二人分。


窓の外。

琥珀は落ちながら叫んでいるだろう。

それは琴の名前かもしれない。
悲鳴かもしれない。
でも、出来れば名前を呼んでいてくれれば嬉しいと思う。

もう、何も聞こえないけれど。


出血多量のせいなのか、琴は何も見えないし、何も聞こえなくなっていた。
痛みもない。


あぁ、死ぬんだなと思った。


でもこれは悲劇じゃない。

最後の最後に、大切なものを見つけられたのだから。

だから、これは幸せな終わりだ。

ゆるやかな気持ちだった。

口の中が血かなにかでまったりとしている。
いつか琥珀たちと食べたバタークリームのロールケーキみたいだ。

なつかしい。

琴はふわりと微笑む。


ゆっくり、意識はなくなっていった。










"何かを探してこの星に生まれた"