佳き日に







「建物の裏側だから誰もいないのかな。」

何か気を紛らわせたくて、窓の外に誰もいない疑問を口にした。


「多分ちげぇ。もうすぐここを爆破するから避難したんだろ。」

「あ、そっか。」

「落ちたら身体がどんなに痛くても速攻走れよ。全力でこの建物から離れろ。」

二枚だけ残して全ての布団を下に落とし、鉛丹はそう言った。

その目はどこか凛としていて。
決意だとか、覚悟だとか、そんなものが滲み出ていた。


「頼む。」


琥珀の目を見て鉛丹が言い放ったその言葉は決定打だった。

終わり。
茶色いビー玉みたいな鉛丹の目は、揺らぐことはなかった。

もう彼には会えなくなる。

なんとも形容し難い感情が溢れ、胸が締め付けられるようだ。