佳き日に






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二歳下といってもさすが男の子。

背中におぶった桔梗はずっしりと重かった。
一歩踏み出すのにも一苦労だ。

琥珀は唇を噛んだ。

時間がないこの状況で琴が何するつもりなのかは大体想像がついた。
ずんっと身体が重くなった気がした。

階段の前に着き慎重に桔梗を降ろす。
ぼんやりとしているが、目は半分くらい開いていた。


「桔梗、聞こえる?」

そう言って琥珀は桔梗の顔を覗き込んで、目を疑った。


「目、黒い?」


メモリーズは茶色い目で、桔梗の目は茶色いはずだ。
でも、ほんの少し開いたまぶたの先の目は黒く。

琥珀が首を捻っていると、意識がないと思っていた桔梗が弱々しく言葉を出した。


「カラーコンタクトしてるんです。」

「うわっ桔梗しゃべって大丈夫なの!?」

「大丈夫です。麻酔で頭が重いだけで……」

口も思うように動かないようだ。

桔梗の声は耳を澄まさなければ聞こえない程小さい。