佳き日に







「エナカさんきっと愛されてたんですよ。」

「何急に。」

ふ、と口を緩めたエナカに、白川はぐいっと顔を近づけた。

真剣なその目に一瞬たじろぐ。


「エナカさんのお母さんだってエナカさんのこと大好きだって言ってたじゃないですか。」

力強い口調だった。


「エナカさんが幸せにならなきゃ、誰も救われませんよ。生きている人が死者に出来る唯一の償いは、幸せになることです。」

いつまでも悲しんでいたって、死者は喜ばない。

似たようなことをせんべいに言われたな、とエナカは思った。

彼も今では死者になってしまった。

家族はいたのだろうか。
ふと思った。
メモリーズを助けるために死んで、後悔はなかったのだろうか。
舌を噛み切るとき、何を思ったのだろうか。


「エナカさん。」

「何?」

「俺、エナカさんのこと好きですよ。」

「あぁ、うん、片思いありがとう。」

「そこは嘘でも両思いにしてくださいよー。」


困ったように眉を下げて笑う白川に釣られてエナカも笑った。

心が少し軽くなった気がした。