佳き日に




『ただベットに横たわって、されるがままの人なんかよりも、私の方がずっとずっと頑張ってるのに。』

知っていたはずなのに。

手術後に毎回弟に訪れる原因不明の苦しみを。
泣き叫んで、吐いて、気を失って。
まともに物事も考えられなくなって。

だけど、あの時のエナカは弟のその苦しみさえも憎くてしょうがなかった。

そうやって泣き喚いて、両親を独占して。
困らせて。


いなくなればいいのに。
死んでくれればいいのに。


そう、思ってしまっていた。


『私、本当は弟に死んでほしいって思ってるんだ。』


ドロドロとしたものが心の中に広がって。

両親の顔がひどく歪んだ。
母の目が、赤く充血していた。

最低なことをした。
そんなの分かっている。

声を殺して泣き始めた母を見ていられなくて、エナカはその場を後にした。

胸の中がモヤモヤして、その日は全く眠れなかったのを覚えている。