電話に出るべきか出ないべきか。
どちらが得策か考えているうちに雪に携帯を奪われた。

「閏。」

こんな状況なのにいつもと変わらない平坦な声。

雪先輩は落ち着きすぎです、と閏は思う。

顔を上げれば雪と目が合う。
メモリーズ特有の、ビー玉みたいな茶色い目。
きっと自分もこの人と同じ色の目なんだろうな、と感じた。


「手を組まれる前にかき乱すぞ。」


先手じゃなきゃ勝てないからな、と言って。

閏がその言葉を上手く消化できないでいる内に、あろうことか雪は通話ボタンを押した。