「流れ弾当たりたくなかったら車の陰に隠れてろし。」
「今なんとかするから。」
「いや話聞けし。」
死んでもおかしくない状況なのになんで琥珀は言うことを聞いてくれないのか。
琴は痛みで意識が飛びそうになりながらもなんとか「琥珀」と呼びかける。
その声に振り向いた彼女の顔に、琴は一気に毒気を抜かれた。
「なんで泣きそうなんだし。」
「うっさい。」
ふいと顔を逸らし琥珀は車に手をかける。
うーっと唸るような声をだし顔をしかめる。
どうやら車を持ち上げて挟まれた琴の足を抜こうという算段らしい。
ムリだろ、と琴は琥珀の無謀さに笑ってしまう。
彼女は未だ持ち上げようと歯を食いしばり、しかしその目は今にも零れそうなくらい涙が溜まっている。
「泣きたいのはこっちだし。車に足潰されてんだし。」
「頼むから今痛い話しないで。」
「痛いのはお前じゃなくて俺だし。」
「分かってる。」
いつの間にか銃声は止み火薬の匂いだけが辺りに充満していた。


