佳き日に






「一般人がいる建物にメモリーズが逃げ込んだとしても、速攻その建物を爆破するようになる。」


つい数日前の雪の言葉を思い出す。

それが狙いなのか。
琴は隣で突っ伏している桔梗を見る。
ここまで来たらもう置いてはいけない。


「俺はこんなところで死にたくないし。」

お前だってそうだろ。

そう言いながら琴は自分と桔梗のシートベルトを外す。
もう建物との距離は数十mもない。

ドアを開け、桔梗を抱きかかえる。

ガクンッと後ろから激しくぶつけられ、建物との距離が一気に近くなる。

衝突する、その瞬間、琴は横に、車の外に飛び出した。


ガシャァァンッとガラスの割れる音。
物が燃え、飛び散った車の残骸が降ってくる。


そして、左足が燃えるように痛んだ。
車の下敷きにされたのか。

潰された肉、筋肉、骨。
燃えるような痛み。
繋がっている神経が憎い。

今だけは桔梗の麻酔が羨ましかった。


「琴!」


突然聞こえたその声に、一瞬痛みも吹っ飛んだ。
琥珀の声だ。
彼女もここにいるのか。