佳き日に






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やはり椿は菘に何か残していた。

当たり前か、と閏は思う。
姉妹のように二人は一緒にいたのだから。
結びつきが弱いメモリーズで、椿と菘の仲の良さは希少なものだった。


「大切なものを隠すには墓と相場が決まってるんだ。」


雪のその言葉に口をポカンと開けた菘の顔は見ものだった。
後悔と嬉しさが入り混じったような顔。

椿に裏切られたとばかり思っていたのだろう。
墓をもらうなんて、確かに皮肉だと思ってしまうはずだ。
メモリーズに墓など無用の長物だから。


「菘、取引しないか?」


声に反応して菘は顔を上げ雪の方を見る。

閏は頭の中でもう一度雪が先程話した内容を整理した。

秘密警察の男と椿と対メモリーズ用の細菌と赤い女。
この話が本当だったら、閏はその先の未来を考えてゾッとした。