佳き日に





「……それは、赤い女もその男と同じくメモリーズを細菌で殺すのには反対だったってことですか?」

頭がこんがらがってきた。
謎の思考の男に、本物の赤い女に、椿。


「いや、赤い女は何も知らされていなかったようだ。男は椿を殺したいから協力してくれとでも言って赤い女を呼び出したんだろ。もしくは赤い女が椿を殺したくなるよう発破をかけたか。」

椿は赤い女を殺そうとして逆に殺された。

一見そうとしか見えない構図。
菘だってそう思い込んだ。
桔梗や、鉛丹も。
秘密警察や政府の人たちだって信じただろう。

それこそまさに、椿の計画だったというのか。


「結果的に椿と男の思った通りにことは運んだ。元々二人はメモリーズ用の細菌に反対という同じ立場だった。だからこそ手を組んでこんな無謀な賭けに出たんだろう。」

「椿さんが赤い女に殺されるのも計画の一部だったってわけですか?」

「だろうな。政府は赤い女が椿と戦い始めたところで大方そっちの監視に気が逸れた。その間に男は気絶したメモリーズの男一人抱えて政府の本拠地に乗り込んだんだよ。メモリーズを一人やるから実験してるところを見せろ、とでも言ったのだろう。」


「そして細菌を盗んだんですか?」

「あぁ。だがその男もその後政府に殺された。」


雪のその言葉を区切りに車内に沈黙が落ちた。