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「全然気づかなかった。」
十秒ほど呆然とした後で、エナカが言えたのはそれだけだった。
エナカの困惑は予想してたのか、白川は微かに微笑んだ。
「まぁ俺少し顔いじりましたしね。」
そう言われても、彼も他の秘密警察と同じようにサングラスで顔を隠していたのでエナカも素顔は見たことがなかった。
「秘密警察を追い出された後、すぐに政府に勧誘されたんですよ。秘密警察の内部を知っている人間が欲しかったんでしょうね。」
「それで、あんたはすぐ政府に入ったの?」
ついエナカは責めるような口調になってしまった。
二十一年前から政府は秘密警察を監視しようとしていたことに驚いた。
というか、少しショックだった。
確かに秘密警察は情報漏洩に厳しすぎるところもあったかもしれない。
仕事仲間といっても素顔や本当の名前も知らないのが当たり前で。
でも、メモリーズとやりあうにはそのくらいしなくちゃいけないのだ。
生まれてからずっと裏社会で生きてきた者たちに隙なんて見せられない。
どこにスパイがいるのか分からないのだから。


