何度もかかってくる電話に菘は顔を顰める。

最近嫌なことばかりだ、と誰にともなく不満を心の中で呟く。
椿のところに警察が来て、逃げたはいいが女性も使えるカプセルホテルが見つからず仕方なしに男装して泊まることになって。

おまけにこの誰からか分からない電話。

菘はいつまでも止まらない着信ち苛立って、ついに通話ボタンを押した。

『やっと出たな。あんたが菘か。』

「誰、あんた。」

菘は相手が自分のことを知っているという事実に驚く。
同時に、警戒する。

電話の向こうの相手は、敵か味方か。

『おい、そんなに警戒するなよ。俺は椿から伝言を預かっただけだ。』

「椿?椿って今何してるの?」

『あれ?知らないのか。』

「何がよ。」

刺々しい菘の口調とは対照的にら電話の相手の口調は穏やかだった。

『椿は死んだよ。』

ハッと、菘の呼吸が一瞬止まる。
しかしすぐに平静を取り戻した。